魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


そう宣った茜さんは、に、と口端をつり上げて蓮様に視線を送った。


「だそうだから、もう僕のことは警戒しなくていいよ。ご主人様」

「な、」

「あー、もうほんと笑えてきた。御曹司を走らせる執事とか初めて見たよ」


おかしー、と、茜さんが自身のお腹を押さえる。
思わず蓮様と顔を見合わせ、繋がれた手が何だか急に恥ずかしく思えてきた。それは彼も同じだったようで、慌てた様子で手が離される。

茜さんは目尻を拭いながら、「で?」と話題を変えた。


「そんなに急いで、君たちはどこへ行こうとしてたの。場合によっては乗せてってあげるけど?」

「……え、と」


それは私もよく分かっていないところなので、回答に詰まってしまう。
すると蓮様が茜さんの方へと歩み寄っていき、小声で何かを伝えた。途端、茜さんが水を得た魚のごとく表情を和ませる。


「OK. You're a nice guy.」


合格だ、とでも言いたげなくらい上機嫌である。そのまま運転席に乗り込んだ茜さんは、「乗りなよ」と私たちを促した。


「あ、あの……蓮様、一体どこに」

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