魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


慣れている。みんな私のことが羨ましいだけだ。

楓とは長い付き合いだし、一緒にいるうちに自分の身の振り方も分かってきた。
最初こそ怯えていたけれど、どうして私がこそこそしなければいけないんだと吹っ切れてからは、かなり図太く生きられている。


「百合、やっぱり移動しよう」

「えー……もう一口食べちゃった」


もともと、今日ここへ来たのは日替わりデザートのためだ。
桜といちごのフレジェ。楓はすごく渋っていたけれど、私がごり押した。

周りに構わず会話を続ける私たちに、じっとりと視線が絡みつく。いや、正確に言うと、私に。

いまだ楓の隣に座る彼女は、こちらを恨めしげに睨んでいた。私は小首を傾げて、嫌味がてら満面の笑みで対抗する。
憤怒で顔を赤く染めた彼女は、席を立って奥へ消えていった。


「ちょっと百合。また挑発するようなことして……」

「うーん、通算八回目の勝利かな?」


おどけてみせると、楓はようやく表情筋を和らげて「もう」とため息をついた。


「やっぱりここは嫌だなあ。百合が良くても私が嫌~」

「楓は気にしなくていいんだよ」

「そーじゃなくてね。だってみんな、いただきますも言わないし、平気で食べ物残すし、むかむかするの」


それは分かる。良くも悪くも、「普通」とはかけ離れた人たちが集う場所だ。私としては、楓が「普通」の感覚を持っているのが逆に不思議なくらいだけれど。

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