マザー症候群

 遊は美波の和服姿を想像していい写真が撮れると、内心色めき出した。  
 「最近、京都では若い男の子の着物姿が流行っているのよ。それが恰好いいの。游も着てみない」
 「俺。俺はいいっす」
 「そう。じゃ、無理にとは言わないわね」
 二人が着物談義をしていると、タクシーが花見小路に着いた。
 舞妓体験『かんざし』は花見小路通りの裏手にある舞妓体験が出来る工房。併せて着物レンタルも手広く行っている。
 美波は『かんざし』に入ると、手早く気に入った着物を見繕い、それに袖を通した。  
 游がロビーで待っていると、美波が和服姿で現れた。
 濃紺の地に愛らしい梅の花がほんのりピンクや紫に色づく小紋。薄いピンク地に藍色の線画で蜻蛉が大胆に描かれた帯。着物と帯がベストマッチして大人の色気を醸し出している。   
 「わ~お。撮りてえ」
 游が美波の和服姿を見て感嘆の声を上げた。


 
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