マザー症候群
 
 「今日、帰国されたのでしょう。元気でした」
 やっと井本が普段の口調に戻った。
 「ああ、波斗。元気よ」
 「長かったですね」
 「丸2年かな」
 「変わられていません」
 「少し男らしくなったかな」
 「私、部長のこと、お義母さんとお呼び出来たらなって。まあ、淡い夢なんですけど」
 井本が美波の目の奥を探りながら。
 「へえ、井本ちゃん。そうだったの。
波斗のこと。へえ、全然知らなかったわ。でも、それって本気なの」
 「本気も本気です。私、部長の家にお邪魔した時のこと。一度だけ。波斗さんにお目にかかったことが」
 「そんな事があったっけ」
「ええ。めちゃめちゃにタイプなんです。猛烈にアタックしようと思っていた矢先の留学。ショックもショック。がっくりでした」
 井本が本心を正直に吐露した。




 
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