マザー症候群

6話 無様な転落

 
 美波は波斗の彼女に会って以来、めっきり酒を飲む事が多くなった。
 波斗が彼女と結婚する事が決まってからは、酒の飲む量もめっきり増えた。
 焼酎だけでなく、ビール、日本酒、最近ではウイスキーまで幅広く飲むようになった。
 今日も朝から目覚めのウイスキー。
 極小さめのガラスのコップに琥珀色の液体をとくとくと注ぐ。そして、それを一気飲み。
 胸がカーと熱くなり、これがやけに旨い。以前は、ウイスキーは焦げ臭くて余り好きではなかった。それが、それが、である。
 ウイスキーは、飲めば飲むほどに旨さが増すから不思議である。
 「今日は会社を休もう」
 「馬鹿言え。打ち合わせはどうする」
 美波とまともな美波が喧嘩をする。
 最近、朝の定例行事だ。
 「そうだ。打ち合わせは部下に頼もう」
 「お前は部長だぞ。そんな事出来るか」
 「じゃ、遅刻をするか」
 「駄目だ。それも、絶対に駄目!」
 まともな美波が、酒に溺れる美波の前に壁となって立ちふさがる。
 「なら、最後の一杯」
 「仕方がない。それで、妥協するか」
 と、いうことで、また一杯。


 
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