言わなきゃわからない?
隣りのデスクの由貴ちゃんがため息をつきながら受話器を置いた。


「どうかした?」

「また小西さんからで…」

「なんか、ごめん」


小西さんとは、最近、取引の始まった会社の担当で。
週一くらいの頻度で電話をしてくる。
栄さんが担当している取引先のため、あたしも契約時には同行した。
その時に、事務担当になることは伝えていたのだが。
あたし名指しで電話をしてくることが無いため、事務チーム…とりわけ由貴ちゃんが多く小西さんの電話をとっていた。


「…言ってなかったですけど、一番最初に電話きたとき『相田さんのこと紹介してください』って言われたんですよね」

「紹介って…」


そもそも事務担当だから。
あきれて言葉も出ない。
由貴ちゃんは冗談っぽく煽る。


「なんか、ストーカーになりそうなタイプの人ですよね」

「えー、やめてよ」

「待ち伏せとかされてないですか」

「SNSの友達申請がきた」

「承認したんですか」

「保留中」


正直、どうしようか困っている。
SNSの登録はしているが基本的に見る専門だし。
いつかこうなることもあるのかな、と思っていたけど。


「小西さんかもって思うと、電話出たくないんですよね」


由貴ちゃんはため息をつきながら吐き出すように言った。


「次架けてきたらあたしに代わって」
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