言わなきゃわからない?
ふと、いい香りがした。
顔を上げると隣りに栄さんがいて、こっちを見ていた。


「栄さん」

「おつかれ」


栄さんはコーヒーを差し出してきた。
あたしはイヤホンを外してお礼を言う。


「ありがとうございます」

「終わりそう?」

「大丈夫だと思います」

「今日のぶん、振替で休み取れるように江藤さんに言っとくから」

「はい」


栄さんは立ち上がり、自分のデスクへ戻る。
今日はスーツじゃなくて私服だった。
シャツにデニム。
カジュアルだけど、ちゃんとしてて、清潔感がある。
それに。
仕事のときとは違う香り。


「…いいニオイだったなぁ」


平日のもさわやかで好きだけど。
今日は夏っぽいというか…。
なんだか、知らない一面を見れて嬉しくなった。
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