好きになってよ、王子様。
植村くんと並んで教室に向かって歩き出す。
早速いろいろ案を出してくれるけど、私は頭に入らなかった。
反応が薄い私に対して嫌な顔ひとつせずに、笑顔で話してくれる植村くんはすごく良い人なんだと思う。
その時、後ろの方で非常口の扉が開く音が聞こえた。
そこにいた人物を知っているから、振り向かなくても誰が出てきたのかは分かる。
「あ……」
まだ数メートルしか進んでいなかったから、私たちに気づいたのかもしれない川島くんの声がはっきりと聞こえた。
ただ人がいたから驚いて?
それとも私だったから?
もしかして見られたかもしれないっていう焦り?
どんな気持ちで声が漏れたのかは分からない。
でも、私もそんなに強くないから。
川島くんの方は一度も振り返らずに、気づいていないフリをしてその場を離れた。