高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
「今日は何色にしましょうか。水色かそれとも緑にしましょうか」

答える間もなく、スカーフをほどいて藤崎社長はまた別の場所へと首筋に跡を残す。

二人っきりの帰り際を見計らって、藤崎社長は首筋の跡を確認するようになった。

さすがに一種類ではということで、商談先の会社から何種類か取り寄せてくれて、新しい跡をつけては新しいスカーフが増えていった。

スカーフが増えるたびに藤崎社長はわたしのことをどう想ってくれているんだろうとそればかりを考えるようになってしまった。

「お! 片桐ちゃん、そのスカーフ似合うね」

しばらく席を空けていた二階堂さんが出向先から戻って、わたしの首にあるスカーフを指差した。

「あ……ありがとうございます」

「僕が差し上げたものです」

藤崎社長はパソコンを目にしながらも落ち着いた声をあげていた。

「そうなんだ。てっきりヨリかと思ったよ」

「もっといいものプレゼントするから」

と、時頼さんは不機嫌そうに声をとがらせていた。

二階堂さんは時頼さんの姿をみないようにして、藤崎社長の席に近づく。

「で、時宗、うまくいってるわけ? 例の件は」

「最終段階にきている感じかな」

「いい結果になるといいな。中間報告を読んだ教授も期待していたから」

ちらちらと二階堂さんはわたしをみながら藤崎社長としゃべっている。

「仕事、引き受けなきゃよかったのに」

と、時頼さんが渋い顔を浮かべながらパソコンの前でつぶやいていた。
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