あなたに捧げる不機嫌な口付け
オトナとコドモ

彼は私にキスをした。

私と彼の関係は煙草に似ている。


どことなく人工的であやふやで、あってもなくても変わらない、それなのに。強い依存性を孕んでいる。


好んで煙草を吸う彼の姿はまるで、私たちの象徴みたいだ。


「祐里恵」


ゆりえ、と。舌たるい彼の呼び声が私を拘束する。


押しつけられた重みに眉をしかめて、私の背を覆い、じゃれる彼の手を払った。


「何、恭介さん」


振り向けば、捉えどころのない笑みが出迎えた。


この笑顔がいささか軽薄に見えるのは、恨めしさが募るからだろうか。


「ん? キスしたいなーって。していい?」


恭介さんは毎回申し訳程度に尋ねるけれど、ほとんどの場合、私に拒否権はない。


今回だってそう。


好きにすれば、と強気に答えようとした私の返答を、早くも「す」で遮る。
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