あなたに捧げる不機嫌な口付け
「ちなみにもしされたら、祐里恵はどう対処すんの」


うーん。そうだな。


「押し倒されたら動けないと思うんだよね」

「あーまあそうだな、祐里恵は力があるわけじゃないし」


うん、と頷く諏訪さん。


実演してもいいんだけど。

押し倒してくれたら面白いんだけど。


しばらく見つめてみたのに普通に見つめ返されたので、諦めて口頭で説明することにした。

ノリが悪い。


「そう、動けないから、暴れず順調に押し倒される」

「……順調?」


うん、順調だよ。


「まず冷静に無表情になるかな。で、鼻で笑って嘲笑する」

「は!?」


無表情は冷たく。目指せクールビューティー。


「で、『そんなことしか言えないの? 随分中途半端だね?』とか言って無理矢理キスする」

「はあ!? 何でキスすんの!?」

「だって絶対顔近いんだから、一番楽でしょ。本当はベルト外すのがいいんだと思うけど、多分両手塞がれてて無理だし」


足はさすがにそんな器用なことできないし。まあ足も塞がれてるかもしれないけど。


塞がれてないなら蹴り飛ばすっていうのもいいよね。

うーん、やっぱり抵抗はした方がいいかもしれない。


「いや意味分かんないから! なんで煽るんだよ!」

「怯むからに決まってるでしょ」

「ええ?」


賛同してくれると思ったんだけど、諏訪さんはそういうタイプではないものだから、分からなかったらしい。
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