あなたに捧げる不機嫌な口付け
若干がっかりして、またねと通話を切ろうとした私を、諏訪さんが静かに引き止めた。


「ゆっくり話聞きたいから、おいで」

「え、いやいいよ」


人がいるのに誘われるままのこのこ行ったら、私、ただの馬鹿じゃないか。


「いいから。弱ってる祐里恵って貴重じゃん」

「…………」


この。


素直に察せた私が恨めしい。


いろいろ回ってたどり着くと諏訪さんが正解なのが、もっと憎たらしい。


弱ってる、とわざわざ入れたのは諏訪さんの策略というか気遣いというか、とにかく今の私にはよく効く。


「弱ってなんかいないけど」

「はいはい」


放った強がりを流して、おいで、と諏訪さんが再び誘った。


「……分かった、じゃあ寄らせてもらう」

「お待ちしておりますよー」


じゃあね、と遠くで呟いた諏訪さんに、これまた遠くでじゃあね、と答える声がした。


高くて可愛い声だった。
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