あなたに捧げる不機嫌な口付け
短くインターホンを鳴らして、了承を待たずにさっさと扉を開ける。
私が行くときは、電話で確認が済み次第、大抵鍵を開けて待っていてくれる。
「お邪魔します」
「いらっしゃい」
リビングで出迎えた恭介さんが、こちらに不満げな顔を向けた。
「祐里恵ってさ、いっつもお邪魔しますって言うよね。全然お邪魔じゃないからなんかやだ」
「……は?」
何を言ってるのこの人。ただの慣用句でしょ。
私が恭介さんに思うことの最大三つは、『は?』と『嫌』と『この変態』なんだけど、恭介さんは今日も通常運転らしい。
ああ、今日も平和だなあなんて現実逃避したくなるくらいには、いつも通りおかしい。
「じゃあなんて言うの、たとえば」
呆れながら聞くと、恭介さんは間髪入れずに即答した。
「ただいま、とか」
「は?」
反射で頭が理解を拒む。
思ったより低くて不機嫌な声が出た。
「そうしたら恭介さんはおかえりって言うの?」
「うん」
大真面目に頷く恭介さんに眉をしかめる。
こちらこそ即答である。
私が行くときは、電話で確認が済み次第、大抵鍵を開けて待っていてくれる。
「お邪魔します」
「いらっしゃい」
リビングで出迎えた恭介さんが、こちらに不満げな顔を向けた。
「祐里恵ってさ、いっつもお邪魔しますって言うよね。全然お邪魔じゃないからなんかやだ」
「……は?」
何を言ってるのこの人。ただの慣用句でしょ。
私が恭介さんに思うことの最大三つは、『は?』と『嫌』と『この変態』なんだけど、恭介さんは今日も通常運転らしい。
ああ、今日も平和だなあなんて現実逃避したくなるくらいには、いつも通りおかしい。
「じゃあなんて言うの、たとえば」
呆れながら聞くと、恭介さんは間髪入れずに即答した。
「ただいま、とか」
「は?」
反射で頭が理解を拒む。
思ったより低くて不機嫌な声が出た。
「そうしたら恭介さんはおかえりって言うの?」
「うん」
大真面目に頷く恭介さんに眉をしかめる。
こちらこそ即答である。