あなたに捧げる不機嫌な口付け
「やだ気持ち悪い」

「ひどい!」


ひどいのはそっちだ。

何してくれるんだ、鳥肌立ったんだけど。


腕をさすりながら全面に気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い、と念入りな感想を表すと、ひどいひどいとむくれた恭介さんが抗議した。


「言ってくれたっていいじゃん! けち!」

「嫌!」

「言ってくれたらマフィンもう一つ追加するから!」

「もので釣るな馬鹿、絶対い、や!」

「じゃあもう二つ!」

「っ……」


卑怯者め、あそこのマフィンすっごく美味しいのに。


言うのとマフィンもらうのとを秤にかけて、渋々折れた。


「…………先に、渡して」


だってマフィン欲しい。


「言ってくれたら渡す」

「……じゃあ、言ったら三つ追加」

「分かった。確約する」

「本当に、ただ……た……、それ言ったら三つ追加ね。絶対だからね」

「約束する」


恭介さんが妙に真面目な、でも目いっぱいに期待を載せた表情で静かにこちらを見つめるので、思わず溜め息がもれた。
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