あなたに捧げる不機嫌な口付け

ごめん、好きなんだ。

祐里恵が電話に出なくなった。


その他の連絡手段も、当然のように全部繋がらない。


たった今まで出入り自由だった部屋に、ある日突然鍵をかけられて、その入り口で堅く揺るがない扉を呆然と見つめている子どものような気分だった。


……俺は、何をやらかした。


焦ったからか。

焦って、嫌う口調で祐里恵を呼び出したから。

それとも、焦っていろいろを整理しようとしたからか。


考える。考える。考え、る。


きつく眉根を寄せて唇を噛む。


「ばかやろ……」


遠い存在だと言わせない程度には、近づいたと信じていた。


もしかして、祐里恵も少しは好きになってくれたかな、なんて。それがいけなかったのか。


なあ、祐里恵。


「祐里恵にとって、俺はこの程度の存在だったのかよ……!」


全然表情を変えないで、

普段と同じ帰り道で、

あっさり笑みすら浮かべられる情けを持って、


こんな簡単に足切りしてしまうくらい、俺は祐里恵にとって、何てことはないやつだったのかよ。


事実を認めるのは思いがけないくらいに辛かった。
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