あなたに捧げる不機嫌な口付け

誘導反対。

何、という返事に少しは可愛げが足されて、うん、になってきた頃。


街は赤い包装で溢れていた。


ホームルームが終わって、掃除も終わって。

玄関で何となく会った友達と一緒に帰ろうとしていたら、左に並ぶ友達が、人影を発見した。


「ねえねえ、誰かいない?」

「え、どこ?」

「ええとね、あそこ」


指差された位置に、確かにコートがのぞいている。


誰だろう? 大学生かな、なんて続けられて、嫌な予感がした。


……あのコート、見たことあるのは気のせいじゃないよね。


近づいて、そうっと見遣れば。


「祐里恵」


やっぱり恭介さんがいた。


左手はポケットに入れたままで、校門にもたれて右手を上げる。


「桐谷ちゃん、知り合い?」


目を見張って聞かれたので頷く。


関係を聞かれる前に、ごめん、じゃあね、と離れた。


「また明日ね」

「うん、また明日。じゃあねー!」


勢いよく手を振って去る後ろ姿を見送って、恭介さんの手を取る。


「行こう」


本来は遠回りになる道に足を向けると、意図を汲んだ恭介さんがにやりと意地悪に笑った。
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