あなたに捧げる不機嫌な口付け
「知り合いに会うの嫌?」

「そうだね。説明が面倒だから」


行こう、ともう一度手を引く。


歩き出したものの、二人きりの今は、隣に並んで、いまだににやにやしている恭介さんこそが面倒だ。


「明日は大変だね」

「別に。彼氏って言うだけだよ」


誤魔化すと余計に突っ込まれて時間がかかるから、聞かれたら彼氏って言ってしまった方がいい。


聞かれないといいんだけど、多分聞かれるし……なんで校門まで来ちゃったかな。絶対に目立つのに。


ジト目を向けたら、なぜか瞠目する恭介さんがいた。


「え、祐里恵、彼氏って言うの?」

「事実でしょ。紹介しちゃいけない?」

「いや、いけなくはないけど。いとことか、濁すかと思った……」


右手で顔を覆う恭介さんに眉をひそめる。


そんな回りくどいことしないよ。

いとこって無理があるでしょ。なんで車もないのに年の離れたいとこが突然迎えに来るの。

そんなの、よっぽど何かないとむしろ変だよ。


「ほんとは避けられるかなって思ってたし……」


まだ弱気なことを言うので、ちょっと苛ついた。


どうやら、認識の擦り合わせが必要らしい。
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