あなたに捧げる不機嫌な口付け

約束をしようか。

「ゆーりえっ」

「…………」


テンションの高い恭介さんが、いつものように訪れた私を出迎える。


玄関に入っていきなりの挨拶に戸惑いを隠せない。


いつもはそばに寄ってからやっと気づいて、「あ、いらっしゃーい」とか無用心にもほどがある適当な出迎えをするのに。


「……何?」


これは何、警戒心しか湧かないけどどうしたの。

あなたの気怠いいつもはどこに行ったの。なんで今玄関にいるの。


いや、積極的なのは別に悪くない。

連絡を受けているのだから、もちろん大体このくらいに着くかなって予測できても変じゃない。


だけど落差が落差だけに違和感があるというか。恭介さんには似合わない、というか。

むずがゆい感じ。


あれだ、ええとそう、混ぜるな危険。


「…………」


いや、はしゃいでいる理由は何となく分かるんだけど。


終いには抱きすくめてきた暑苦しい彼氏さんに眉をしかめる。


私を押し潰す気かな。じゃれる限度を越えている。


過剰なスキンシップを仕掛けてくる恭介さんを引き剥がして、勝手知ったる奥に進んだ。
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