ダイヤモンドウエディング~キスからはじまる永遠の愛~《完》
「俺はこれで失礼します」

お母様の言葉で椎名さんの表情が益々険しくなる。

彼は杯のお酒を一気に煽って立ち上がった。


「椎名・・・さん」

この雰囲気の居たたまれず、部屋を出て行った。


「何だか凄く・・・椎名君落ち込んでいたみたいね…何かあったのかしら?」


お母様の言葉が発端だとは全く気付いていない。天然な性格もいいけど、この場合は椎名さんが可哀相過ぎる。


「私、お手洗いに行きます」


「そうか・・・」


私は拓真さん達に軽く頭を下げ、部屋を出た。


「あ、あの・・・」


部屋に戻ろうと廊下を歩く椎名さんを呼び止めた。



「どうしたの?小陽さん」


「いえ、その…」


椎名さんを傷つけたのはプロポーズの返事をしなかった私の方で。


「俺も君に話がある」
椎名さんと私は廊下の奥にある日本庭園に出た。
ホテルの2階に特別に設けられた場所。高層ビルが立ち並ぶ都心とは思えない見事な竹林や人工池。
私達は散策しながら話をする。



「濱部拓真は俺の行きつけのバーでは手の早い御曹司で有名だよ。小陽さんも彼に抱かれたの?」


「え、あ・・・いえ・・・」


「俺は2年間、我慢したのに・・・プロポーズの返事もされないまま・・・他の男結婚って酷くない?」


「申し訳ありません・・・椎名さん」


優しいはずだった椎名さんの態度がガラリと変わった。
冷たく氷のような視線と声を浴びせられる。
こんな風に彼を豹変させたのは私だと思う。私がキチンと返事をしないから。


「謝るなら・・・俺と結婚してよ」





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