幼なじみの恋煩い
「雪斗ってばマジ冷てぇ、マジ泣きそう……ぐすん……」

そう言って、泣き真似を始める悠介。
分かりやすい演技に俺はまたはぁ……と溜め息をつく。
それと同時に悠介は人が変わったかのように真面目な表情をした。

「けどさ。お前も分かってるだろうが、気持ちを伝えずして、
楓佳ちゃんに意識してもらえるとは思うなよ。以心伝心なんて恋愛にはないからな」

分かってる。そんな事くらい。
分かっているが、伝えられない。
男のくせに振られるのが怖いって情けねぇな。

何も言えずに黙っていると、
悠介がそんな俺の顔をじっと見て、
話題を変えるように話を切り出した。

「そういやさ、部活何にするつもりだ?」

「……今まで通り、サッカー部にするつもりだけど」

昨日、学級で入部届けが配られて、
既にその紙にはサッカー部と書いてある。

「へぇ、俺も!」

俺の前の席に座っている悠介は
机の中から入部届けの紙を取り出すと、ニッコリ笑顔で俺に見せた。
そこには確かにサッカー部と雑な字で書かれていた。

「やったな!」

「……別に。逆にお前が騒々しくてイライラしそう」

「ひっでぇ」

素直になれないだけで、実は嬉しかったりする。
せめて、楓佳にだけは素直に気持ちを伝えられたらいいのに。
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