イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
そんな父の矛盾した想いと、母の遠慮。娘である碧羽は、両親の不器用な愛情と心の隙間など知る由もなかったが、今であれば少しは察することができる。
両親の関係とは、かけ違えたボタンのようなものだったのでは? そう思慮してみる。父の裏切りは、母が息を引き取るまえ、母の枕元で知ることとなった。
当時、体調の芳しくない母を案じて、碧羽は父に連絡をとった。
父のスマートフォンは仕事用なので、碧羽たちには『連絡はアトリエに』と言われていたので、その通りにアトリエにかけた。
数度のコールの後、受話口に出たのが、父の愛人であった。勿論その時は、露と知らぬことではあったのだが。
碧羽は受話口の相手に、家に戻ってくるよう父に伝えて欲しい旨を述べ、通話を終えた。
その晩、母の体調が急変する。どうしていいか分からなかった碧羽は、椿木宅へと駆け込み、助けを乞うた。
すぐに救急車が呼ばれ、母は緊急入院することになった。父が姿を現したのは、母が入院してから三日後のことであった。
すでに母は体力も限界で、命のともし火も尽きかけていた。そこではじめて父は己の罪に打ちのめさせる。母の枕元で泣き崩れ、懺悔する。