イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。

 だがそれも、妻の四十九日法要が済むと、また家を空けるようになった。

 もともとワーカホリック気味の父ではあるが、それでも父は父なりに家族を想ってはいるのだ。

 夫は妻を愛し、妻は夫を慕う。そしてふたりは子を寵愛した。

 だが父の愛は、妻と子だけにあらず。帰らず詰めるアトリエにもまた、父の愛を受ける女性がいたのである。

 妻は夫の不貞に気づいてはいたが、其れに目を背けた。暗黙の了解で進む、歪なる愛の形は、父を妻の夢を叶えたこの家から遠ざけたのである。

 母が女として、父に真っ向から対峙していれば、あるいは状況は変わっていたのかもしれない。

 父は、母が何も言わないことに、妬心を剥き出しにされなかったことに、寂寥感を感じていたのである。

――もっと己に独占欲を示して欲しい。

 勝手な言い分ではあるが、それが純粋なる気持ちである。

 男とは、自身の大切なものには強い独占欲を見せる。逆に相手から独占欲を向けられても、己の充実感と支配欲が刺激され、結果、自尊心が満たされるのである。

 だが男の心理は難解であり、追われると逃げたくなるのだ。追われるよりも、とこしえに追っていたい生き物なのである。
< 23 / 151 >

この作品をシェア

pagetop