京都チョコレート協奏曲
投げやりな言葉を吐けば吐くほど、顔が笑いの形に歪んでしまう。
自分の性根がこんなに卑屈だとは知らなかった。
「近寄っても触れても平気やし、絶対に治る。その口から吐く息は、毒やない」
「どうだろうね? 毒かもしれないよ。おれの吐いた息を吸える距離にいて、きみ、本当に気持ち悪くないの?」
自分の言葉に自分で傷付いてしまうのに、止められない。
だって、おれが言葉を重ねるたびに、花乃ちゃんのまなざしは張り詰めていく。
その苦しそうな色が、とてもキレイだ。
おれの意地悪な思いを、花乃ちゃんはある瞬間に、一気に叩き壊した。
「気持ち悪いわけないやん! 黴菌でも毒でもないって、うちが証明したる」
言い返す隙もなかった。
柔らかい感触に、唇を塞がれた。
……キス?
驚いた途端に吐き出した息は、キスの内側に閉じ込められている。
鼻の頭が少しこすれた。
まばたきをして焦点を合わせる。
化粧なんかしなくても長いまつげに、視線を惹き付けられた。