騎士団長殿下の愛した花
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その数、およそ100。
薄暗い森の中を馬に乗って疾駆していくのは、甲冑を身に着けた騎士たち。
皆揃いの甲冑の左肩に大きく捺(お)された刻印の中で、三つの頭を持った犬がこちらに向かって首をもたげていた。これは冥界の番犬ケルベロスを模したものだ。
正面を向いたケルベロスは、しかし左右2つの頭を首の半ばから切り落とされ、残り1つの頭を残すのみとなっていて。
それは王国に暮らす者なら誰でも1度は見たことのある、唯一の国立騎士団『三頭犬の復讐(ケルベロス・オブ・アヴェンヂュ)』の団章であった。
馬の嘶き、地を蹴る蹄の音、甲冑が擦れて耳障りに響く金属音が、森の静かな停滞を僅かずつながら、しかし確実に斬り裂いていく。
後方の群団を彼方に引き離し、2頭の馬が先頭を駆けている。そのうち1頭は、珍しい黄金色の美しい毛並みを持っていた。
しかし、その黄金の馬に跨る青年の髪は、それよりずっと眩く輝いている。
純金をそのまま鋳溶かしたような非常に濃い金色でありながら、その濃さは決して下品なものではない。むしろ見る者に触れば途端に蕩けてしまいそうな淡さをも感じさせた。
美しい金髪の毛先を首筋の辺りで跳ねさせている青年の名は、レイリオウル=オ=ルミナント=クリンベリル。
『三頭犬の復讐』の騎士団長であり、そして王国の第二王子でもある。
鼻筋のすっと通った彫りの深い美貌は、世の女性が一度見ればもはや忘れることなどできないだろうと容易に想像できるほどだが、レイオウルは深い琥珀色に美しく煌めく瞳を不機嫌そうに眇めていた。