騎士団長殿下の愛した花
愛してるとは言えず。
「きみが笑う度、どれだけ心が弾むのか。きみが私を見つめる度、どれだけ胸が詰まるのか。
きみが私を抱き締める時、私がどんなに泣きたくなるか。……きみの金色の髪に触れた時、どんなに胸がいっぱいになったか、伝えたくてもどうしたらいいのかわからないくらい、どうしようもなく好きなの」
ずっと一緒にいて欲しいとも絶対に言えない。
……それでもこの想いはもう抑えていられなくて。
「だから……」
言い淀んだフェリチタの頬を、レイオウルの指が撫でる。
視線を上げた彼女の頬を手のひらで包むと──桜色の唇にそっと口付けた。
触れるか触れないか、そのくらいの接吻。それなのに、唇同士が離れた時フェリチタは身体が震えて熱い吐息を零した。
「僕がどれだけこうしたかったか、きっとわからないだろうね」
火照る唇をゆっくりとなぞられ、フェリチタの腰がびくりと揺れる。
「……最初はその綺麗な容姿に目を惹かれた。妖精のような白い肌。戦場にたなびく皓い髪は赤に映えてぞっとするほど美しくて。藍玉の瞳は空よりも深い蒼穹を閉じ込めたような神秘的な色合いで輝く。……ひと目で心奪われた。
細い少女の身で剣を握る気高さ。勝てない相手に立ち向かう心の強さ。それも勿論魅力的だ。でも」
フェリチタの身体の線を確かめるように、手のひらで頬から首、肩、腰を辿る。彼女の存在を己に刻み込むように、ゆっくりと。