苦手なあの人
苦手なあの人
気付けばオフィスの中、寺崎さんとふたりになっていた。

……気まずい。

目の前の、寺崎さんをちらり。

三つ年上の、寺崎さんの補佐になって早半年。
しかし私はいまだに、寺崎さんに馴染めない。

すらりと高い背、きれいな黒髪。
指の長い大きな手に、黒プラスチックの、ハーフリムの眼鏡。

できる男、そんな見た目の割に、笑顔が可愛くてそのギャップに萌えるって、課内どころか社内の女性には評判だけれど。

私に云わせれば、あの笑顔はどこか胡散臭い。
作ってる、ようにしか見えない。

だから私は、寺崎さんに馴染めない。

「うっ」

なんとなく気まずいまま仕事を続けていたら、わかんないところにぶつかった。
いつもだったらハナちゃん先輩に聞けばいいが、今日はすでに帰ったあとで。
誰かに聞くとしたら寺崎さんしかいないわけで。
ちらりと視線を向けたものの、また画面に戻してため息。
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