無理すんなよ。


中学校のときも何回かこんなことはあった。遥の姉兄である私に、気持ちを伝える橋渡しのような役割を頼まれることもあった。



呼び出したり、時間をわざと合わせたり、いろいろな方法でみんな告白してたけど。




「……受け取れないです」




遥は、告白にOKはしない。



好きという感情がわからないらしいけど、それ以前に自分から気持ちを伝えない人に興味はわかないそうだ。



私も生まれてから今まで恋なんてしたことがないから、口出しもアドバイスもできる立場ではない。




それでも。



「直接言わないと伝わらないこともあるんです。少なくとも、遥はそれを望んでます。だから……」




「────琴葉ちゃん!」





フワリ。風が舞って、木々がそよぐ。



琴葉ちゃん、なんて近所に住んでるおばさん達にしか呼ばれたことがない。



だって今まで私には友達と呼べる存在がいなかったから。

< 57 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop