大好きなきみへ、あの約束をもう一度



「だってさ、俺が一番だと思ったんだよ」


「い、一番って、何が?」


照れてるのを悟られたくなくて、私は少しだけ俯く。



海斗が妬けるなんて言うからだよ。

今だけ、冬になればいいのに。

そしたら、この火照った顔もすぐに冷めるだろうから。



「俺さ、湊が男子に啖呵切ってんの見てさ」


「た、啖呵……?」


私……啖呵切ったことなんてあったっけ?

いや、待って……。

記憶に引っかかって、私はある日の会話を思い出す。


『こっちにも選ぶ権利あるし、2番目?馬鹿にしないでくれます?』


『こっちは、2番目、3番目、4番目……何番目だろうが、願い下げだから!』


もしかして、男子に絡まれた時の!?

あの時、そういえば海斗、傍にいた気がする……。

っていうか、本当に啖呵切ってた、私。



「はい、しました……」


あんなところ見られてたなんて……恥ずかしいと気まずいのダブルパンチだ。

あれって、海斗の友達だよね??

わー、海斗の友達に向かってなんてことを……。

いや、でもあれはあの人もあの人だし……。


「いや、すげーカッコイイって思ってさ」


もんもんと悩んでいると、海斗は予想外な返答をしてきた。


「は、カッコイイ?」


えっ、怒らないの??

みんなの気分悪くしたあげく、空気まで凍りついたのに。



「普通ならみんなより目立つのは嫌だとか思うじゃん?」


「それはまぁ……少し前の私もそうだったと思うし」



だけど、変わったのは早織が死んでから。

伝えたかった言葉、もう伝えられない想い……。

たくさんあるからこそ、私は自分の気持ちに素直になりたいと思った。



まぁ、もとからハッキリ物を言うっていう性格もあるけど……。

これでも、一応気を使って言えない言葉もあったし。



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