お隣さんと、半同棲?!
「お母さんとお父さん、ハネムーンに行ってこようと思うの。お父さんの貯金も使いどきだしね」


急に笑顔になったお母さんはなんの変哲もなく、わたしに告げた。


「……えっ、と…ハネムーンって新婚旅行でしょ?お母さんたちもう結婚して何年よ」


「17年」


屈託のない笑みで答えるお母さんはやっぱりおかしい。


17年って……いやいや、絶対新婚って言わないでしょ。


「で、いつ行くの?わたしは別に1人でも大丈夫だけど」


「そう!そこなのよ」


いきなり大声になるお母さんに若干身を引きつつ、わたしはその話を聞く。


「紀衣を1人で置いとくのはお母さんたち心配だし、でももう高校生だから独り立ちすることも必要じゃない?」


つまりどういうこと?


言っている意味がわからない。


「簡単に言うと、紀衣にはこの1ヶ月間、休日だけお隣さんのところで泊まってもらうことにしたの。いい案でしょ〜」


自慢気に話すお母さんはえっへん、と胸を張っている。


休日だけ。


その言葉の意図は読み取れる。


きっとわたし1人で家に居させることはできない、なんてことだろう。


平日はほとんど学校で1日が終わるし。


「だぁーかぁらっ!ちゃんとお世話になるのよ、お隣の “戸田さん” のところに」


と、戸田ぁ???



その瞬間、わたしの頭はプツリと機能を停止した。
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