エリート外科医の一途な求愛
理解不能ではあるけれど、実を言うとこういうのは初めてではない。
だから、軽く酔いの回った頭の中で、私は『またか』と思うだけで次のジョッキを受け取った。


こうなったら、いい感じに酔ってしまおう。
そう思い、新しいジョッキを傾け二口ほど飲んだ時。


「災難だったな、仁科さん」


名指しで声を掛けられ、私はジョッキをカウンターに戻した。


「……?」


その声の出どころを探して目線を彷徨わせると、同じカウンターの逆サイドで、頬杖をつく男性の姿が目に入った。
一瞬ボーッと見つめてから、すぐにハッと我に返る。


「かっ……各務先生っ!?」


ひっくり返った声で私が呼ぶのを聞いて、彼はクスクスと笑いながら肩を揺らした。


「悪い。偶然だったんだけど、面白いとこ見ちゃったな」


意味深に目を細められて、身体の奥底からカーッと熱が上がってくるのを感じる。


「医局でも高嶺の『バラ』って言われるほどの君が、何も言い返せないまま振られる場面に遭遇するとか」


更にそんな一言が加わり、私の頬は真っ赤になった。


「か、関係ないじゃないですかっ!」


勢い余って乱暴な言い方をしてから、すぐにハッとして口を噤む。
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