エリート外科医の一途な求愛
劣等感とプライド
あのずんぐりむっくりと各務先生のおかげで、昨夜はやっぱりヤケになっていた。
バーでビールを三杯飲んだだけじゃなく、結局家でも缶ビールを三本空けてしまい、今朝起きた時、嫌な頭痛がした。


こんなことで二日酔いになるほどヤケになるなんて。私もまだまだ青いな。
そんなことを考える自分に軽く失笑しながら、私はいつもより十五分遅く家を出た。


昨日は梅雨の中休みで晴れ間もあったけど、今日は朝からどんより曇り空で、湿気が強く蒸し暑い。
嫌な季節だな、と思いながら、この時期、毎朝不快でしかない満員電車に揺られて三十分。
アナウンスもないまま、混雑の影響で十分遅延してくれたおかげで、私は駅から大学キャンパスまで走る羽目になってしまった。


そのおかげでなんとか遅刻は免れて、汗を拭きながら仕事を始める準備をする。
呼吸もだいぶ落ち着いてきて、デスクに軽く頬杖をつきながら、私は医局内を見渡した。


元々、医局というのは、医師の詰所、休憩所なんて呼ばれたりもする。
ここを普段から執務室として使っているのは、奥のドアの向こうの個室にデスクを構える教授くらい。
医局員であるドクターの大半は、病院に直行したり大学の講義に行ったりしていて、この時間はだいたいいつも閑散としている。
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