エリート外科医の一途な求愛
「なあ、仁科さん」


すぐ横に立ち止まる気配を感じた途端、私のデスクに彼が片手を置くのがわかった。
少し身を屈めた体勢で静かにそう声を掛けられ、私の肩に更に力がこもる。


「……なんでしょうか、木山先生」


彼には横顔を向けたまま、固く引っかかる声で返事をする。
木山先生は私の頭上でクスッと笑いながら、わざとらしく声を潜めた。


「君さ。各務先生と付き合ってるんだろ?」


誰もいないとは言え、割とストレートに聞かれて一瞬戸惑った。
それでも私は無言のまま、彼にはYESもNOも答えない。


そんな私を面白そうに笑うと、木山先生はクルッと身体の向きを変えて、私のデスクの端に軽く腰掛けた。
それを横目に、私は黙ったまま椅子ごと逆サイドに避ける。


「違うの? 各務先生は君を好きだってこと俺の前で憚らなかったし、仁科さん、君も好きなんじゃないの?」

「……そんなこと、木山先生にお答えする必要があるんですか」


警戒心を隠しもせず、刺々した口調で素っ気なく言って、私は眉を寄せた。
嫌悪感を露わにして、彼が腰掛けているデスクの端に横目を流す。


私の視線に気づいてるくせに、木山先生は立ち上がろうとしない。
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