エリート外科医の一途な求愛
むしろ更に楽し気に、腰の横に手を突いて、再び私の方に背を屈めてきた。


「じゃあ、答えなくても別に構わない。ただ、一応同僚のよしみで、忠告しておいてやるよ」


押し付けがましいその一言に、私の嫌悪感はひたすら強まる。
それでも、黙ったままわずかに目線を上向けた。


木山先生は横柄に私を見下ろして、口角を上げて笑った。


「最近、各務先生が割とちょくちょく教授に呼ばれてるのは、もちろん仁科さんも気づいてるよね?」


訊ね掛けられたその言葉に、私の指先がピクッと震えた。
まさに気になっていたことだ。
不覚にも木山先生を大きく見上げてしまう。


私の反応に、彼はとても満足そうにふんぞり返った。


「やっぱりね。気づいてて、気になって仕方なかったってとこか」

「っ……嫌らしい言い方しないで、知ってるなら教えてください。二人はなんの話をしてるんですか」

「それが人に物を聞く態度かね~……と思うけど、ここは俺も、君に協力してもらう方がありがたいからな」

「……え?」


彼に言われた『協力』という言葉に怯む。
私の中ではちょっと前から、木山先生から持ち掛けられることは全て、胡散臭くて関わりたくないことばかりという認識になっているからだ。
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