エリート外科医の一途な求愛
資料の在処を教えてもらい、先に貸出手続きを済ませてから、一番奥まった稼働式の書架に向かう。
その書架には、院内研究会の議事録がズラッと年代順に並んでいた。


一番古いのは二十年前の日付の物。
私は『心臓外科研究会』とタイトル打ちされた議事録を、過去五年分引っ張り出した。
ちょっと埃っぽい文献に、鼻がムズムズするのを感じた時。


「なあ」


いきなり背後から声を掛けられ、それと同時に私にフッと影が下りた。
すごい集中して資料を探していたわけでもないのに、すぐ後ろに人が来る気配を全然感じなかった。
当然私はビクンと大きく身体を震わせ、慌てて後ろを振り返り……。


「きゃ、きゃああっ……!」

「あ、バカ。声が大きい!」


悲鳴を上げた途端、すぐ目の前に立っていた般若が、私の口を大きな左手で塞いだ。
それだけでもパニックなのに、その白衣の般若は、右腕を私の頭上の書架に預けて前のめりに立っている。
私が背を仰け反らせないと、白衣の胸に額がぶつかりそうなほどの密着具合だったのだ。


「っ……」


そんなことにも更に動揺して息をのみ、私は手にしていた議事録をバサバサと床に落としてしまった。
般若が、それを目で追うように、顔を床に向ける。
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