暗黒王子と危ない夜
そう言い切って、新しいお寿司に手を伸ばす。
「そーだ。七瀬はこいつのこと気に入ってっから手出さない方がいいぜ。俺もいい女だと思ってるけど」
いい、女……。
お世辞でもそんなことを言ってくれるのは嬉しいけれど、本多くんのこととなると素直に喜べない自分がいた。
静まっていた場が、また次第に騒がしくなる。
「三成君の言い方だと、まだ付き合ってはない感じか? 俺は七瀬君の女かと思ったんだけどなあ」
「ばっか。エナさんがいるのに、んなことできねえって」
「まあ、それは……」
ひそひそ聞こえてくる会話に胸が痛む。
楽しい食事の場でひとり落ち込み続けるのはだめだと思いながら、我慢してお寿司に手を伸ばした。
するとその時、表の入り口が開き。
入ってきたのは、両手に大きなビニール袋を抱えた中島くん。
「琉生君!お先に食事失礼してます!」
「荷物ずいぶんとでかくないっすか!?」
「俺持ちます!」