暗黒王子と危ない夜
「相沢さんもコーラ飲む?」
1.5リットルのボトルが1本、どん、と机に置かれた。
「あ、ううん、あたしは大丈夫……」
慌てて首を横に振る。
「お前なあ。コーラだけじゃなくて違うのも買ってこいよ」
「買ったよ。椎葉もいる?」
「あ? なんだこれ」
「禁煙キャンディー。意外と美味いよ」
個々の袋に入った飴玉がざらざらとテーブルに落とされる。
「いらねーよ。俺煙草とかやってねえしな」
なんて言いつつ、一つに手を伸ばす三成くん。
そんなやり取りにくすりと笑いながらも、一つだけ空いた席を見るとやっぱり気分が沈んだ。
本多くんはまだ下りてこない。
ということは、今もエナさんと一緒にいるということで。
もし、本多くんが下りてきたとしても、あたしは顔を合わせる勇気がない……。
「……萌葉? どうした。やっぱり気分悪いのか」
迷惑をかけたくない気持ちはある。
でも、今はそれよりも、逃げたい気持ちのほうが大きくなってしまった。
「……ごめん、三成。……あたしもう、帰りたい、かも」