暗黒王子と危ない夜
「あのね……言い方がおかしくなるかもしれないけど」
「なんだ」
「本多くんはエナさんのことがきっかけで黒蘭をやめたって、言ったよね。それなのに……、えっと……。なんていうか……」
「なんで今も繋がり持ってんのかって話か?」
どうにか遠回しに伝えようとしたのに、三成くんはストレートに補ってくれる。
「お前は、そんなこと聞いて傷つかねぇの?」
「……あたしは、」
「お前が傷つくなら教えたくねーな。俺、重い話はするのも聞くのも嫌いなんだ」
暗くてよく見えなくても、三成くんが真剣な顔をしているのが分かる。
傷つくなんていまさらだ。
自分の気持ちはまだ曖昧だけど、本多くんとエナさんのことを中途半端にしか知らないまま終わりたくないと……思うから。
「それでも教えてほしい。……は、初めて、すきかもしれないって思った人のことだから……」
消え入りそうになりながらも伝えれば、三成くんは「そうか」と息を吐いて。
「七瀬が黒蘭を抜けた理由には、エナを守るためってのが少なからずあった」