暗黒王子と危ない夜

心臓が冷たく反応する。



「追放されただのなんだの色々言われてるけど、最終的にそれを選んだのは七瀬本人だ」

「本多くんが、自分で……?」


「深川の怒りの根源である自分がいなくなれば、エナに当たることもなくなるって思ったんだろ。そんで、エナとの関係切ったことにして。それでも収まらなきゃまた助けるから、って言い残して出ていった」


遠い日を思い出すように目を細めて、三成くんは空を仰いだ。


「エナは深川の他に甘えられる場所を欲してる。好きとかいう感情があってもなくても、あのふたりの関係はそう簡単には切れねぇよ」


言葉通り、三成くんは何も隠さずに話してくれたんだと思う。あたしが知りたいと言ったから。

自分でも、傷つく覚悟はしていたつもり……。


「おい、だからな。そんな、なんて声掛けていいか分かんねえツラすんな。泣きたいなら泣け」

「……大丈夫、」

「ほんとか? 強がんなよ。あと、別に慰めるわけじゃねえしさっきも言ったけどな。本多がエナのことどう思ってるかは、まじで分かんねえぞ。好きかもしんねえし、憎んでるかもしんねえ」
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