暗黒王子と危ない夜

「お前ぐらいだよ、俺が本心で可愛いとか言ったの」

「うん」


あまりにナチュラルに告げられるものだから、考える前に相づち感覚で頷いてしまった。

言葉の意味を理解して、ようやく、逸らしていた目を三成に向ける。



「あ、いや……。えっ、今なんて?」

「上の空かよ。何回も言わせんな、お前が、あたしのこと嫌じゃないの?とか聞くからだろ」


「う、うん。たしかに聞いたけど」

「だから嫌じゃねーって言ってんだ。他の女なら嫌だし出て行けって言うけど、お前ならいいって話」


そう言い切ると頭の後ろで腕を組み、足を投げ出す。

わざとらしいため息を吐いて、三成は宙を見つめた。


「辛気くせぇのも嫌いだな」


独り言らしかったので黙っていようと思ったら



「そういやお前、今さっきそれ見てたろ」



そう言われ、指を差された先。



「あ、うん。綺麗だなって思って……」

「そのステンドグラス、七瀬がデザインしたやつ」



花の形が光で映し出されている。

色んな色の花が散りばめられていて、その真ん中に一際大きな花があった。……青い。



「それ、ブルースターって名前の花をモチーフにしてんだってさ」

「ブルー、スター?」

「名前通り花びらが5個ある青い花」



青い花。そう言えば本多くんは、青が好きって……。



「んで、花言葉は “ 幸福な愛 ” ……」

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