暗黒王子と危ない夜
中島くんは入り口のそばに、やや俯き加減で立っていた。
前髪が影になって表情は読み取れない。
「さてと。足止めも出来たことだし、計画を進めていこうか」
ご機嫌な様子で手を叩きながら、再び体を密着してくる。触れられるたびに体が震えた。
この男を一度でも怒らせたら取り返しのつかないほど最悪の事態になると、本能的にわかってしまう……。
「そうだ。人質を取っても証拠がなければ弱いよね。ということで、はい、こっち向いて」
肩を掴まれて、無理やり向かされたのは、スマホの撮影画面。
顔を背ける暇もなく、シャッターが切られる。
「うん、ばっちり。怯えたその表情のお陰で、なかなかいい雰囲気も出てるし。今から七瀬くんに送ってあげよーっと」
見せられた自分の顔は、今にも泣き出しそうな本当に情けないものだった。
「さあ、お楽しみの時間が始まるよ。まずは今から、青藍に戦闘要員を送り込んであげるね」
その言葉に、中島くんがわずかに顔を上げた。
「容赦なく足元から崩していくよ。 元黒蘭の闘犬が仲間を失ってどんなカオをするのか……楽しみだな」