暗黒王子と危ない夜

無言のまま歩き始めた彼のあとに続く。


来た道を戻っていたかと思えば、ある地点で向きを変え、細い通路に出た。

そこから少し歩くと防火扉のような入り口があり、中島くんが足で乱暴に押し開けると、奥に無機質な空間が見えた。



「入って」


窓がない代わりに、床に大きな穴が開いていた。

穴のように見える──入り口。


下の方に手すりと階段が伸びている。

地下から、さらに地下へと続く道。



「迷宮みたいだろ。 ラッキーだね、こんなとこ滅多に入れないぜ」


すごいね、わくわくする、なんて皮肉を返す余裕も気力も当然ない。

それどころか、こんな、誰からも見つけてもらえないような場所に閉じ込められてしまうのかと恐怖が先走る。



「安心しな、俺も一緒に下りる。見張り役ですからね」


コンクリートの階段。

一つ一つの段差が大きい。中島くんが1段下ると、同じくらいの目線になった。



「手すり、ちゃんと捕まって。転ばれたりしたら困る」



そう言ってどんどん下へと進んでいく。

背中が見えなくなる前にと、重たい足を動かした。

< 380 / 470 >

この作品をシェア

pagetop