暗黒王子と危ない夜

見つめ合う。

脈がわずかに早まった。

まずは言われたとおり、隣に座ろうと思い近づいて身を屈めると、



「遠い」

「えっ」

「そんなに離れてちゃあ、ふたりでいる意味がないだろ」



それはもしかしなくても、もう少し中島くんの方へ寄れという意味で間違いはなく。



「こんな陰気な部屋、たとえ嫌いな奴だとしても、くっついてた方が幾分マシだと思うけど」



真面目なトーンだったので、からかわれているわけでも下心があるわけでもないと分かり、素直に体を寄せて座ることにした。


肩が当たるか当たらないかくらいの距離。

そのわずかな隙間を埋めるように、中島くんは首を傾けて、そっと体重を預けてきた。



動揺した勢いで思わず体を離してしまいそうになったけれど。


「……ぬくい」


それがあまりにも穏やかで安心したような声だったから。

身を固くしながらも、ぎこちなく受け止めた。



「……やっぱやめた」


沈んだ声が響く。



「こんなとこで本多の話なんかしたら、すんげー気分悪くなりそう」


再びうなだれた中島くんは、それからしばらく何も言わなかった。

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