コンパスと鍵と真紀子さん
Chap.1




ここのところ、父親との間柄はかなり良好。


周りの家庭の事情なんて知らないけれど、少なくとも私は良い方なんじゃないかなって思っている。




「本当に悪いね。」

「仕方ないでしょ、仕事なんだし。」

「いや、でも明日は実琴の…」

「だからしっかり働いて稼いで来て下さいな。
だいたい、一週間前から言ってたじゃん。」

「そうだけどな…」

「だから、いまさら気にしなくて良いから。」

「悪いね。」




父娘の仲が良好な原因の一つは、パパの優しさだ。

多分、というより絶対、かな。




いってらっしゃい、を玄関からして見送る。

パパは何度か振り向いて、申し訳なさ気に小さく笑う。
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