コンパスと鍵と真紀子さん


別にそんなに気にすることないのに。

そう思うけれど、パパはとにかく優しい。


それはもう、どうしようもない位に。





パパがお洒落な階段をゴミ袋と一緒に下って行くのを見て、私は戸を閉めた。



銀色を古くしたような、味のある重い戸。

輝きのない銀色だけれど何処か人に安心感を与えるそれは、元からその色なのだと言う。


銀古美。

それがその色の名称で、パパは絶対このアパートにはその色の戸にしようと思っていたらしい。


< 3 / 40 >

この作品をシェア

pagetop