【BL】夕焼け色と君。
good-bye world
1
「ーーあ、日椎(ヒスイ)のやつ、また振られてんぞ。」
午後の抗議を終えて帰ろうと立ち上がった友人ーー我妻 珠時(ワガツマ タマジ)が、講義室の窓から外を眺めて呟いた。
講義室は3階、俺の位置から下の様子は窺えず、窓辺に移動する。
視界にそれらしき二人の姿を入れた瞬間、女が男を平手打ち。
うわぁー……痛そう。
「毎度毎度懲りないね、日椎も女共も。最早、この大学の名物行事だな。」
やれやれと珠時は肩を竦めた。
「アイツ、そんな有名なの?」
そう問う俺に、相手は冗談だろ?と笑う。
「何、日椎のこと知らないの?」
「知らない。ああいうキラキラしてそーなの苦手だもん。」
平手打ちをされたまま動かない日椎ってやつに目を向ける。
上から見ても分かる身長の高さ、風に揺れている色素の薄い髪、それに加えた白い肌。
まぁ、如何にもモテそうな男の要素だ。
「確かにそれもそうだな。有名だよ、見た通りあの容姿だ。女が放っておかないだろ?」
「そーだろーね。振られてたけど」
「それそれ、そこがアイツを更に有名にしてるんだよ。日椎って来る者拒まずなんだけど、大抵一週間もしないうちに振られるんだ。日椎が振るなら未だしも、振られるんだぜ?よっぽど難ありなんだな。」
珠時は可笑しそうに笑いながら、鞄を肩に掛ける。
「ま、俺たちには関係ないけどな。山碼(ヤマメ)帰ろーぜ。」
「ああ」
講義室の扉に向かって歩き始めた珠時の背中を追おうと、鞄を手に取る。
窓辺から離れる際、少しだけ窓の外に視線を落とした。
下で佇んでいた日椎の視線が、ふと上に向いた。
あれ?こっち、見てる?
距離があるせいで、視線が俺を捕らえているかは分からなかった。
「山碼ー、早くしろよ。」
「ああ、悪い。」
急かされて、慌てて珠時の方へ足を動かした。
……瞳、綺麗だったな。髪と同じ色だ。