スターチス

来た、また来た。
もう何度見たか、このシーン。

部屋には3人。
あたしは掛けてたソファーそのままで、一人はこたつ、一人はフローリングに正座。
片手にコーヒー持ってたのを思わず落としそうになったけど、ここは動揺してはいけない。

だって最初からルールは決まってたから。
口出しする権限は誰一人持っていないんだから。

「俺、ここ出るわ」

わかってたよ。
みんなそれが理由で出て行ったし。

「彼女、できたんだよね」

またか。
あたしは一度もそんな気配ないのに。

「出るのは明日」
「明日?!」

あまりの事の早さに驚いたあたしはそんな言葉しか出てこなかった。

「うん、明日」

うん、って。
いつ準備してたんだよ?!
そんなそぶりなかったし、そんな空気出してなかったじゃん。

そういうことだから、ってスッキリした顔してキッチンに戻るのか。
あたしはどうすりゃいいんだ。

「とうとう俺ら2人になったなぁ」

机に顎を乗せてしみじみと呟かないでよ。

あたしは持ってたコーヒーを再び口につけた。
アイツが出て行ったあと、あたしはこの男とルームシェアしていかなきゃなんない。
3人だった時とはまたわけが違う。

男と女が2人で同じ部屋で過ごすって、それもどうなの。
いや、今に始まったことじゃないけど。てか、今更男も女もないけど。

それでも気が重くなるのはしょうがない。
あたしは明日からの生活を想像するだけで溜息がこぼれて先が思いやられた。
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