スターチス

なんだかんだであっという間にお泊り旅行の日はやってきて、現在朝6時。
ゆーくんとあたしとミキ兄と宏奈さんがミキ兄の車に乗り込み、目的地へ向かう。

運転席にはミキ兄、助手席に宏奈さん、後部座席にあたしとゆーくんが座ってる。
集合してから鬱陶しいくらいのテンションを持ってきたゆーくんに低血圧のあたしは多少イラッとしながらも話しかけてくる度に相槌を打ってた。

「眠い?」って聞いてくるから「かなり」と答えると「もたれていいよ」という言葉に甘えて今は肩を借りて寝てる。

ミキ兄は一瞬ルームミラーから強い視線を向けたけど、それを無視してもたれた。
これくらいいいじゃん、と思いながらやったことだけど、案の定ゆーくんも寝てしまって仲良く仮眠をとってる。
途中で気付いた宏奈さんが「可愛い二人だね」ってミキ兄に言ってたけど、素っ気無い返事を返したミキ兄を見てくすくす笑ってた。

ほんと素敵な彼女だと思う。
笑った顔も声まで可愛い。

「着いたぞ」

2時間ほど走った先、今日の目的地はあたしの希望で水族館。
イルカを触れたり、魚にえさをあげたり体験が出来る水族館でどこに行くか決めるときに一番に候補としてあげた。

ミキ兄とゆーくんはあたしの希望を優先するって言ってくれて、宏奈さんも久しぶりだって言ってくれたから嬉しかった。

起こされたあたし達はぼーっとしたまま車を降りて、水族館へ向かう。
その途中で宏奈さんが「寝顔可愛かったよ」って隠し撮りしてたらしいあたしとゆーくんの写メをあたしに見せてくれた。
それを送ってもらいこっそりと待ち受けにしたのはミキ兄には秘密にしてもらった。

「どれがしたいんだ?」

水族館に入ってすぐ整理券を取るために受付に向かう。
先着順で人数制限があるから早く来たわけだけど、ここに来てみると他にも体験できることがあって悩む。

「ちずがしたいことやろう」

ゆーくんがそう言ってくれて、悩んだ結果、イルカを触るのとアシカにエサをあげる体験に決めた。
宏奈さんもどっちも初めて体験することらしくテンションがあがっていた。
それを見てるミキ兄が笑うからやっぱり素敵なカップルだなって思えた。

「じゃあ、それまでの間は水族館まわるか!」

ゆーくんがあたしの手を繋いで歩き出す。

「ちょっと待て。俺らも一緒に回るぞ」
「はぁ?そっちはそっちで二人で見てよ。高校生のWデートじゃあるまいし」

ミキ兄の言葉にゆーくんが反論。
それを見てた宏奈さんはあたしを見てから「二人でまわって時間になったら合流すればいいんじゃない?」と言ってくれた。

宏奈さんのフォローにミキ兄は何も言えなくなって、結局合流する形になった。
分かれるとき、宏奈さんがあたしにピースをしてくれたから、協力してくれたのと宏奈さんもミキ兄と一緒にいたかったんだなってことが伝わった。

「ミッキーの監視の目が超イタイんだけど」

お魚を見ながら呟く。

「でも宏奈さんが協力してくれてるよ」
「ひろっぺ様様だなー」

繋いだ手に少し力をこめて、少し距離を縮めてゆーくんが頭をくっつけた。
すごく嬉しそうに笑うゆーくんを見てるとあたしも嬉しくなる。
それにこうして手を繋ぎながらデート出来るのも嬉しい。
触れ合える距離で一緒にいられることがこんなにも嬉しい。

魚を見ながら、ふとしたした時に合う視線。
それすらも嬉しくてニヤけちゃう。
あたしってこんな乙女だったっけ?って思っちゃうほど恋する女の子になってる。
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