陽だまりの林檎姫

2.傍にいることで

これが本当に現実なのだろうか。

ここに着くまでにもう何回心の中で呟いた事だろう。

ドレスは勿論の事、靴も化粧も髪型も全てパーティ仕様になってまるで別人のようだ。

首元で輝く新緑の宝石は栢木の雰囲気に合っている。

風になびいて動きをみせるドレスの裾は女性らしい印象を持たせ、美しい金色の髪は編み込まれながら後ろで1つにまとめられていた。

耳元で光るピアス、栢木が歩くだけで軽やかな鈴のような音が聞こえてくるようだ。

そんな彼女のすぐ傍にいる北都も同じ位に輝いている。

いつもの無造作な髪型から一変、髪は後ろにかきあげるようにセットされ大人の雰囲気を醸し出していた。

品のあるタキシードに身を包んだ北都は何回か見たことはあるが、やっぱり何度も見ても目を瞠るものがある。

馬車を走らせて辿り着いた豪華な会場は既に大勢の人で賑わっていた。

誰もが見事な衣裳を着こなしている。

堂々たる姿勢、独特の立ち振る舞いは貴族ならではのものだ。

笑みを絶やさず余裕を振りまく様は当たり前の景色だった筈なのに久しぶり過ぎて別世界に来た感覚が生まれた。

どういう立ち位置で臨めばいいのだろうか。

「浮いてませんか?」

平常心を心掛け、小さな声で北都に尋ねた。

「何言ってんだ。お前の方が慣れてるだろ。」

「でも私ここまで着飾ったことありません。」

「は?」

「あ、いや。大人仕様と言いますか…父が嫌がるので割と愛らしい系を着させられていたんです。」

まだまだ子供だからという言い分で、恥ずかしながらと更に声を落として曇らせる。

それには北都も唖然と口を開けて瞬きを重ねた。
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