イジワル上司に甘く捕獲されました
「……美羽、顔上げて?」

まだまだ私を困らせたい様子の瀬尾さんはクスクス笑っている。

私は真っ赤な顔のまま瀬尾さんのワイシャツの胸元に顔を埋めたままブンブンと顔を横に振る。

「……まだ、全然足りないのに?」

年上の上司とは思えないくらいの拗ねたような声を出す瀬尾さんは。

私を抱きしめたまま片手で髪を撫でてくれている。

「美羽、体調は?」

思い出したかのようにソッと尋ねる瀬尾さん。

散々キスをしておいて聞いてくることが何だかおかしくて。

「だ、大丈夫……」

少し苦笑して返事をする。

「ごめん、美羽、調子悪かったのに……そういや、美羽、飯食った?
俺は昼にやたらと弁当食わされたからまだ大丈夫だけど……」

頭上から降ってくる声にハッとする。

……お弁当。

そう、お弁当……。

そもそもそれで私は自分の気持ちを認識したんだから。

バッと顔を上げると、瀬尾さんが私を目を細めて見つめていて。

その瞳が優しくて泣きたくなった。

「……キスさせてくれるの?」

イタズラッ子のように煌めく瞳に尻込みしつつ。

「……せ、瀬尾さん。
お、お弁当って……」

気になっていたことを口にする。





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