イジワル上司に甘く捕獲されました
「弁当?」

私の髪を撫でていた手を一旦止めて、怪訝な顔をする瀬尾さん。

「弁当って俺が昼間食ってた弁当?」

コクンと頷く私。

「……そ、そのお弁当って……誰が作ったんですか?」

できるだけ自然な声音を装って聞く私に。

「え、誰かは知らないけど。
店のスタッフさん達じゃない?」

スタッフさん?

「金子さんは知らないみたいでしたよ……」

確認するかのように伝える私に。

「金子さん?」

少しだけ間があいて。

ブハッと瀬尾さんが笑う。

「違う、違うよ。
そのスタッフさんじゃなくて。
取引先の店のスタッフさん!」

「え……?」

今度は私が怪訝な顔をする。

そんな私の頬に軽くキスをして。

「今は店内でのランチ提供しかしていないけど、弁当を販売しようって試みをしている取引先があるんだよ。
で、どんなメニューが良くて味付けはどんなもので、どれくらいの量がいいかって試行錯誤しててさ。
今日たまたま呼び出しがあったから、寄ったら紙袋にゴッソリ持たされたの。
弁当箱も色んな種類のに入ってて、凝っているものからシンプルなものまで。
ターゲットが俺らみたいな男性社員だからって、モニター頼まれて。
皆一斉には食べられないから支店で配ったりしてさ、それぞれが休憩中に食べてたよ」

そうだったんだ……。

それで金子さんや皆が知らなかったんだ。

私の思い違いだったんだ……。

心底ホッとした顔をしていたのか。

「美羽……もしかして」

ニヤニヤ笑いをしている瀬尾さん。

「ヤキモチ?」

「ま、まさかっ」

再びぼんっと真っ赤になった私は真っ赤になって否定する。
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